プチバヤシのアメコミブログ

主に邦訳アメコミの紹介します。

DCの邦訳を読んでいくための解説②(正史を更に詳しく。クライシスとは)

というわけで、①(DCの邦訳を読んでいくための解説①(DC全体。正史とエルス) - プチバヤシのアメコミブログ)で説明した通りDCの正史にはいくつかの種類があります。

のでそれらの解説をしていきます。

が、最初に言っておきます。死ぬほどめんどくさいです。けど色んな作品読んでるうちに何となくわかっていったりします。なのでこの記事読まなくていいです。それでも読みたいという人はどうぞ。

 あと、この辺に関しては僕の理解が不十分なところも多いと思うので適宜コメントなどで訂正していただけると助かります。

 

 

  • DCの正史

ではまず正史について説明します。

アメコミでも特にDCやマーベルでは多くの物語が同じ世界で起こっています。

正史というのはその多くの物語が起こっている世界のことですね。

 

そしてその正史以外の世界がエルスだという話も①でしました。

 

では、いくつも種類があるというDCの正史にはどんなものがあるでしょうか。

 

まず前提としてDCの様々な正史世界があるにせよ、一番最初の正史世界というのはDC社が最初に出版した時の世界ですね。例えばスーパーマンが最初に登場した1938年、バットマンが初登場した1939年この時の正史世界がまず一つ目です。

 

では二つ目の正史世界ができたのはどの時かというと、大まかに言って2代目フラッシュであるバリー・アレンが誕生した時(1956年)です。この世界は先ほど説明した正史世界とは別物であり、アース1という名前がついています。そして先ほどの一つ目の世界がアース2です。(最初の世界がで、2個目がとややこしいですがアース1が出来た後にそれぞれに名前を付けようとすると現在の世界をにしたくなると思うので前の正史世界がアース2になります。)

 

このアース1とアース2は互いを行き来する物語があり、例えばアース1のフラッシュであるバリー・アレンとアース2のフラッシュであるジェイ・ギャリックが共演する話やアース1のグリーンランタンであるハル・ジョーダンとアース2のグリーンランタンであるアラン・スコットが共演する話があります。*1

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フラッシュやグリーンランタンはアース1とアース2で別の人間がそのヒーローネームを名乗ってますが、例えばスーパーマンはどちらの世界でもクラーク・ケントです。違いはアース2のスーパーマンのほうが老けてることですね。(こめかみに白髪があって少しシワが多い左の方がアース2のスーパーマン。あとちょっとSの形も違う)

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こうやって二つの世界ができましたが、これらのアース以外にもアース3(悪のスーパーマンであるウルトラマンなどがいる)やアースS(シャザムがいる)、他にもアースXなど様々な世界がありました。

 

 

 

そしてそれら全てのアースを巻き込んだ大事件がありました。「クライシス・オン・インフィニット・アース」です。

 

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この事件により一つを除いた残り全てのアースは滅び、新たな正史世界が生まれました。ニューアースです。

 このニューアースには「クライシス・オン・〜」の事件を生き延びた様々な世界のヒーロー達がいます。しかし彼らに「クライシス・オン・〜」以前の記憶はなく、しかも完全に別の記憶を持っています。

簡単に言うと、この事件と同時にキャラクターに設定変更が行われました。「アメコミはすぐ設定が変わる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんがそれの原因はこういう事件です。なのでこういう設定変更のための理由として使われる事件全般のことをクライシスと言ったりします。(単にクライシスといったときは「クライシス・オン・インフィニット・アース」という作品の略だったりもするのでその辺は文脈判断で。)この記事ではこの事件だけを指すときは「クライシス・オン・〜」って書きます。

 

 そこから更に

「ゼロ・アワー:クライシス・イン・タイム (未邦訳)」

「インフィニット・クライシス」

「ファイナル・クライシス」

などの事件が起きましたが、並行世界がいっぱいできてニューアース一つじゃなくなったとか比較的細かな設定変更はあったもののニューアースの歴史全てが変化するほどの大規模なクライシスではありませんでした。

 

 

しかし、「フラッシュポイント」という事件が起こります。

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この事件によりニューアースが作り直されて新たな正史世界であるアース0ができました。(別名プライムアース。ニューアースとも呼ばれるって書いてるけどさっきのと被るからあんま呼ばないと思う。)「クライシス・オン・〜」の時と同じように以前の正史世界であるニューアースの時の記憶は忘れ、また完全に別の記憶を持ちました。

warnerbros.co.jp

そしてこのフラッシュポイント直後からの世界全体をNEW52世界と呼びます。(なんで52かというと、NEW52開始直後に出たタイトルが52個*2なのと、このNEW52では並行世界が全部合わせて52個だったりします。上のDC公式のキャラクター紹介にそれぞれのアースの紹介があります。ただし52個中7個未登場なので載ってない)

ここから更にクライシス系だけどそんなに正史世界が変わったわけでもない

「DCユニバース:リバース」

という事件が起こり、リバース世界となります。影響としてはNEW52世界のみんながニューアースの時の記憶を思い出し始めたくらいですね。結構大ごとですけどこれでも比較的小規模な変化という扱いです。

そこから更に「メタル」「ドゥームズデイ・クロック」などのクライシス系の事件が起きているのですが、正史世界がアース0であることは変わりません。

そして更に「デスメタル 」で色々起きたのですが、その事件の後の話があんまり出てないのでまだ説明はいいかな…………

 

  •  クライシスとは(ついでにリブートとリランチの説明)

 

 さて、ではこちらでは実際クライシスが起きるとどういう変化が起きるかの解説をします。

まず説明すると、「それぞれのキャラクターの設定が現代的になり、かつ年齢が現代での活躍に適した年齢になる」です。

スーパーマンを例にとります。「キャラクターの設定が現代的になる」というのは例えばスーパーマンのスーツ。基本的にスーパーマンと一緒に銃で撃たれても傷一つつきませんがそれは何故でしょう?

「クライシス・オン・〜」より前ならスーツの素材はクリプトンからの宇宙船の中に入っていた毛布や産着でスーパーマンと同様に地球では凄まじい強度になっており、それを養母のマーサ・ケントが仕立て直したから。

「クライシス・オン・〜」より後のニューアースくらいの時期ならスーツは普通の素材だが、スーパーマンは自分の体の周りをフォースフィールド覆っているから。(マントはフォースフィールドが届かなくてよく破れる。)

フラッシュポイント」より後のNEW52におけるアース0ならスーツ自体がクリプトン星製の鎧だから。

というようにどんどん”現代的”になってますね。

また、「年齢が現代での活躍に適した年齢になる」というのはまあ大体20歳前半くらいに若返るということですね。

 

さてこのクライシスをわかりやすく説明するために色々な例えを考えたのですが、「大きな事件が起こってから以前とは少し違うけど大体同じな世界が出現する。」という例は日本のコンテンツの中ではジョジョの奇妙な冒険における1巡くらいしか思いつきませんでした。(ジョジョは1~6部の世界と7部以降の世界の間にクライシスのような事件が起きていて、二つの世界では似たような名前と能力の登場人物がいたりする)

しかし、クライシスのような事件は起きてなくてもクライシス前とクライシス後の設定変更のようなものをしている例はいくつかありました。

例えばドラえもんです。「キャラクターの設定が現代的になる」の例としてはドラえもんが青くなった理由ですね。昔はネズミに耳をかじられてしまいその姿を鏡で見たショックで青ざめたから。最近はネズミに耳をかじられてしまいその姿をガールフレンドに笑われてしまったためにショックで大泣きし、その振動でメッキがはがれたから。

というように変更されています。

また、「年齢が現代での活躍に適した年齢になる」の例としてはのび太たちがずっと小学生のままというところですね。

 

こう考えると、クライシスは難しい話では無くて長期シリーズ特有の設定の変遷や何年やってても全然年を取らないいわゆる「サザエさん現象」に理由付けしただけなんですね。

 

 

 

さて、ついでにリブートとリランチの説明をします。なぜここでやるかというとクライシスと結構近しいからです。

 

まずはリブート(Reboot)。日本語にすると再起動で、辞書的な意味は「フィクション作品においてシリーズにおける連続性を捨てて新たに一から仕切りなおすこと」です。

具体例を出すとサム・ライミ監督版の「スパイダーマン1~3」とマーク・ウェブ監督の「アメイジングスパイダーマン1,2」の関係ですね。ほかにも「仮面ライダー」と「仮面ライダー THE FIRST」だのがありますが、まあリメイクとイメージが近いと思います。

 

それに対してリランチ(Relaunch)。launchはローンチ・タイトルとかロケットランチャーとかで使う単語ですね。launchを日本語にすると発射、発進なので再出発くらいにしておきましょう。

こちらは「今までの物語の流れを無視することなく、いったん一区切りつけてまた1巻から始める」という意味で使われていると思います。

具体例を出すと「ナルト」に対する「ナルト疾風伝」や「ドラゴンボール」に対する「ドラゴンボールZ」ですね。

 

微妙なニュアンスの違いですが、これが大事になってくることもあるのでついでに説明しました。クライシスはかなりリブートに近いリランチ。といった印象ですね。

 

  •  余談(それぞれのアースの呼び方)

さて、「クライシス・オン・〜」より前にアース1とアース2がありましたが、「フラッシュポイント」の後にもアース1やアース2がありましたね。これらを呼び分けなければならないときにどう呼ぶかを解説します。

 

まあ簡単です。「クライシス・オン・〜」より前ならプレ(pre)クライシスアース1、クライシス前アース1と呼びます。この場合のクライシスは「クライシス・オン・〜」の略ですね。

こんな風にアース○○の前にどの時期かを示す言葉を入れて区別します。

それぞれの時期としてまず「クライシス・オン・〜」より前の時代はプレクライシス、クライシス前。

「クライシス・オン・〜」より後はポスト(post)クライシス、クライシス後、プレフラッシュポイントフラッシュポイント前(略してフラポ前)

フラッシュポイント」より後はポストフラッシュポイントフラッシュポイント後(略してフラポ後)でもいいんですが、どちらかというと「フラッシュポイント」から「DCユニバース:リバース」までの期間を指すNEW52期、「DCユニバース:リバース」以降を指すリバース期。などの○○期という区別の仕方をすることが多いと思います。(区切り方も結構割れる)

また、「ゼロアワー」の前後などでさらに細かく分けてもいいですが、基本的には「クライシス・オン・〜」と「フラッシュポイント」を主な切れ目として扱います。

 

あとDC特有というわけでもなくアメコミ全体としてゴールデンエイジ、シルバーエイジなどと呼ばれる期間があります。

ゴールデンエイジは原初のスーパーヒーローであるスーパーマン誕生の1938年からシルバーエイジの開始まで。

シルバーエイジの開始は2代目フラッシュことバリーの誕生(1956年)からとされることが多いです。そしてコミック全体の話をするときはそこから70年代までをシルバーエイジとすることが多いと思いますが、DCコミックスに関しては「クライシス・オン・〜」のあった1985年くらいまでシルバーエイジに含めることも多いそうです。

この○○エイジをどの期間とするかは人によるというか結構適当なのでシルバーエイジかブロンズエイジくらいまでなんとなくこの辺って思っとけばいいような気がします。

ブロンズエイジは一般的に70年代から80年代半ば。

モダンエイジが80年代から現代までとされていることが多いと思います。

そしてそれとは別のダークエイジ。こちらも80年代から現代まで、つまりモダンエイジと同じなんですけど。名前の通りヒーローが暗くなってる時代ということですかね。

またはブロンズエイジのあとにアイアンエイジという時期を提唱する人もいるそうです。

 

けど正直ゴールデンエイジとシルバーエイジ以外はあんま使われてるのを見ないですね。

 

この金属の名前にエイジってつけるのはギリシャ神話の用語で黄金時代(ゴールデンエイジ)、その次に白銀時代(シルバーエイジ)、その次に青銅時代(ブロンズエイジ)、その次に英雄の時代、そして歴史時代または鉄の時代(アイアンエイジ)つまりは現代(モダンエイジ)が来るというのをパロディというかオマージュというかしてるっぽいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:両方「DCコミックスアンソロジー」に収録

 

DCコミックス アンソロジー

DCコミックス アンソロジー

  • 発売日: 2016/03/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

*2:こちらの5冊はその52個のタイトルの1話目を集めたもの

 

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